DEVELOPMENT STORIES
製品開発ストーリー
03
BOARD MASTER
ボードマスター
(TPFシステム)

INTRODUCTION
シンプルな原理を使った、
新構造のインキ供給システム。
総合筆記具メーカーであるパイロットが1966年、ホワイトボードの製造・販売を国内で初めて開始。同時に発売されるホワイトボード専用のマーカーを担ったのがパイロットインキだった。以来、市場でトップシェアを誇ってきたが、競争が激化する中、「現市場の要望を満たす製品を開発する」というプロジェクトがスタート。当時を、プロジェクトリーダーであった栗田が振り返る。

STORY:01
直液式という新しい挑戦
ホワイトボードマーカーには、中綿にインキを染み込ませ、中綿とペン先の毛管力の差を活用して筆記する「中詰式」と、製品内にインキが液体のままで入っている「直液式」の2種類が存在します。当社が1966年から生産しているのは、「中詰式」。筆記しているうちにインキの消費量が減り徐々にかすれてしまうことや、残量が見えづらいという課題がありました。
そんな課題をクリアし、よりユーザーにとって心地よい製品を目指して始まったのがボードマスターのプロジェクトです。

STORY:02
複雑な要件をクリアしたアイデア
直液式は、ボディに液体を詰めるタイプ。インキが染み込んだ中綿からペン先にインキが伝わっていく中詰式と違い、何らかの供給システムを使って一定量のインキをチップへ送る必要があり、複雑なパーツが必要となるのです。開発当初から、様々な構造の試作検討を行ってきましたが、「最後まで濃く書け、筆跡の幅が安定している」、「インキの交換が容易で、手などが汚れない」、「ポンピングなどの動作を必要としない構造」といった要件があり、開発が難航。そんなときに生まれたのが、2本のパイプを使いインキとエアーを交代する誘導管として機能させ、中綿でインキの供給を調節する仕組み「TPF(ツインパイプフィーダー)システム」です。
STORY:03
TPFシステムの強み
中綿はそのままの状態ではインキが漏れてしまいますが、誘導管で圧縮することにより、中綿に密度差が生じ、密度アップされた繊維にインキが集まろうとする毛管力が働きます。誘導管の先端にインキが集まることで誘導管口元を塞ぎ、余分なインキが中綿に流出しないようにする仕組みです。
TPFシステムでは、夏場の冷房と常温の温度差によるインキの吹き出しも、中綿に密度差を付けることで防ぐことができます。原理的にはとてもシンプルですが、中綿の密度や、中綿へ誘導管を差し込む深さ、エアー交代に必要な面積、毛管力の計算など、さまざまな要素を検討していきました。温度変化に対しては、代用試験として減圧した後常圧に戻すテストを繰り返し行い、インキの状態を確認。さらにキャップを外したままでも乾きにくく、時間が経った文字も消しやすい、TPFに最適な機能を持ったインキも開発されました。
RESULT
こうして生まれたボードマスターは、2006年の発売以来、「これまでの常識にない製品」として多くのユーザーから支持を集めている。ロングセラー製品の多いパイロットインキは、時代に合わせたブラッシュアップを欠かすことはない。これは、市場の声と真摯に向き合い、日々地道な基礎研究を続けるからこそ実現できることといえる。